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Impact Evaluator Research Retreat 2025 参加レポート

アカデミアとクリプトの交差点

2025年7月から8月にかけて、Shuhei Tanakaがアイスランドで開催されたImpact Evaluator Research Retreat 2025(IERR)1に参加しました。Beacon Labs(旧Fracton Research)では、これまでpublic goods fundingやインパクト評価に関する研究開発を継続的に行ってきました2。今回のRetreatへの参加は、私たちの研究活動をEthereumエコシステムの枠を超えて拡大し、より専門的で学術的な領域との協働を深める重要な機会となりました。今回貴重な機会を提供してくださったResearch Retreat運営メンバー及びRetreat参加者の皆様に感謝申し上げます。

Vision Talk

IERRのイントロダクション

初開催となったIERRは、Protocol LabsやGainForest、Ethereum Foundationという、インパクト評価とpublic goods fundingメカニズムの最前線で活動する組織のメンバーによって主導されました。特筆すべきは参加者の多様性です。ブロックチェーン領域の開発者やリサーチャー、データサイエンティストだけでなく、数学者や大学教授といったアカデミアのバックグラウンドを持つ専門家まで、南極大陸を除く6大陸、世界17カ国から25名が集結しました。

Participants

世界各地から集まった多様な参加者たち

参加者は二週間の滞在期間中、Protocol Labs Researchが2023年に発表したImpact Evaluatorメカニズム3への理解を深めるとともに、Impact Evaluatorを拡張するアイデアや現在のpublic goods fundingメカニズムにおける課題、ブロックチェーン領域におけるインパクト評価のあるべき姿などについて議論を重ねました。また、毎日ランチ後に参加者主導のセッションが開かれたり、関連する論文を共有し合ったりすることで、参加者間での知識交流が盛んに行われました4

Papers

共有された研究論文の一部

多様な研究成果とプロトタイプ

参加者はRetreatの成果として、論文あるいはプロトタイプの提出が求められ、二週間のプログラムはデモデイとともに終了を迎えました(デモデイの一部はX上で配信されました5)。私は開発者として参加し、ScaffoldIEというプロトタイプを公開しました。ScaffoldIEはFilecoin public goods funding6から着想を得ており、FilecoinやOptimismのようなグラント運営主体が異なるカスタムストラテジーに基づいたIEラウンドを開催し、IE間での資金分配比率の調整を可能にしました。その他の参加者の成果物としては、Gitcoin Grantsにおける寄付者の行動分析からQuadratic Fundingメカニズムの課題を示唆するものや、Impact Evaluatorシステムを公共財ゲームとして分析するもの、Hypercerts v2の実装提案などが含まれていました。他にも多くの素晴らしい成果物があるので、ぜひご覧になることをお勧めします7Distribution

Beacon Labsのこれから

今回のIERRはBeacon Labsの設立後初のイベント参加となり、私たちの今後の活動を後押しする貴重な機会となりました。Beacon Labs(旧Fracton Research)はこれまでEthereumエコシステムを中心に活動して参りましたが、今後はブロックチェーンエコシステムに留まらず、デジタル公共財、アカデミア及び公共セクターで活動されている方々との対話や協働の機会を増やし、ポジティブサムな世界の実現に向けて活動して参ります。

Footnotes

  1. Research Retreat. (2025). Impact Evaluator Research Retreat. https://www.researchretreat.org/ierr-2025

  2. Beacon Labs. (2024). Recap of 2024. https://beaconlabs.io/ja/reports/recap-of-2024

  3. Protocol Labs Research. (2023). Generalized impact evaluators. https://research.protocol.ai/publications/generalized-impact-evaluators 注:論文内の"Impact Evaluator"という用語は、「インパクトを評価する個人/組織」としてのImpact Evaluatorとは異なるため、Retreatでは混同を避けるためにMERIT(Measure, Evaluate, Reward and Iterate)システムと呼び直す動きもありました。本記事では一貫性を保つためImpact Evaluatorという用語を使用しています。

  4. Devansh Mehta. [@TheDevanshMehta]. (2025年1月). [投稿]. X. https://x.com/TheDevanshMehta/status/1949999916270702993

  5. Devansh Mehta. (2025). Impact Evaluator Research Retreat demo day Iceland 2025 [動画]. X. https://x.com/i/broadcasts/1OyKALjvAogxb

  6. Filecoin. (n.d.). The future of public goods funding in Filecoin: Scaling the PL PGF vision. https://filecoin.io/blog/posts/the-future-of-public-goods-funding-in-filecoin-scaling-the-pl-pgf-vision/

  7. Research Retreat. (n.d.). Research Retreat proceedings. https://www.researchretreat.org/papers/

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一般社団法人Beacon Labs 概要

設立: 2025年6月25日
法人番号: 4011005011093
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住所: 東京都渋谷区道玄坂1丁目10番8号 渋谷道玄坂東急ビル2F-C
メール: info[@]beaconlabs.io
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事業内容: デジタル公共財のコーディネーション問題と資金調達に関する研究開発